この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
仕方なく近所の八百屋さんでダンボール箱を貰ってきて、絵の具で色を付け、華が保育園で作った折り紙のユリを供えてみた。
「位牌はないの?」
そんなことまで知ってるのか?
位牌に似た形のモノ……何で代用しようか?
結局、かまぼこ板が一番ベストだった。
「あのね、位牌にはかいみょーってゆーお名前が書いてあるんだよ」
「戒名ねぇ……」
難しい漢字知らないし……そう思いながら、ふとテレビに目をやるとちょうど『警視庁24時、眠らない街』というドキメンタリー番組をやってて、暴走族が警察の追跡をかわして逃げるシーンだった。
そして、バイクに乗った族の後姿がどアップになった時――
「おぉ! これだ!」
特攻服の背中にデカデカと書かれていた文字。"喧嘩上等! 夜露死苦"。
うんうん。実に戒名らしい難しそうな字だ。
早速、かまぼこ板にソレを書き込み華に見せると怪しげな目をして私を見つめる。
「そんなかいみょーで、パパ成仏出来るのかな? 一応、天国のパパに分かる様に本当の名前も書いといてあげて」
本当の名前とな? まぁ、いいか。
少し抵抗はあったが、華に言われるまま戒名を書いた裏に"沢村銀之丞"と書いてやった。
銀のヤツ、ざまぁーみろだ! "お前は既に死んでいる……"なーんてね。
あ……そう言えば、昔、銀がこの台詞言ってたな。
でも、やっぱり後ろめたい気持ちもあって、銀の名前の上にガムテープを貼りダンボールの仏壇の中に入れた。
でも、まさか本人がコレを見ることになるなんて思ってもなかった。自分の位牌だと知ったら銀、激怒するだろうなぁ~……
なんて思いつつ視線を銀に向けると彼が位牌を見て愕然としている。
「おい! ビックリマークが付いてるぞ? こんなふざけた戒名を俺は初めて見た。この男は族だったのか?」