この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

嗚呼、銀、勘違いの巻き。


でも否定するとまたややこしくなりそうなので、適当に認めておいた。


「そんなヤツと付き合ってたのか?」

「でも、優しくていい人だった」

「だからお前はバカなんだよ」

「な、どういう意味よ!」


険悪なムードを打ち消したのは、華の「オイチョカブしよ!」の一言だった。


さすがに銀も華の前で父親の悪口を言うのは気が引けたのか、それ以上は突っ込んでこなかった。


オイチョカブを始めて数分。初めの内は笑いもあり、楽しく過ごしていたんだけど、銀の大人気ない態度に華は半泣き状態。


5歳児相手に手加減なしだ。


昨日横田さんに勝って自信があったんだろう。なのに、本気の銀にコテンパンに負かされ、華はテンション下げ下げ。見かねた私は銀にそっと耳打ちする。


「ちょっと、もう少し負けてあげてよ。華が泣きそうじゃない」


すると銀が大真面目な顔をして私を見た。


「ミーメは甘い。たとえ相手がガキだろうと俺は手を抜かねぇ。あくまでも真剣勝負だ!

ミーメはハナコに父親が居ないからって、甘やかしてるんじゃないのか? そんなのハナコの為には良くないぞ」

「ぐっ……」


一瞬、ムカッってしたけど、銀の言ってることは当たっていた。


私もキャサリンママ達も、父親が居ない華が不憫でついつい甘くなってた。


「いいか? ガキの頃に甘やかされて育ったら、社会に出た時、苦労するのはハナコだ。なんでも自分の思うままになるなんて勘違いさせるんじゃない」


「銀の言いたいことは分かるよ。でも、一つだけ納得出来ないことがある」

「なんだ?」

「この子の名前は"ハナコ"じゃなく、"華"なの!」

「ふーん……でも"華"より"ハナコ"の方が可愛いぞ」

「あのねぇ~」


そう言いながら私が身を乗り出すと華が私と銀の間に割って入り、悲痛な表情で叫ぶ。


「いいの! いいのよ。ミーメさん。華は今日からハナコになる。銀様が可愛いって言ってくれたんだもん」


私、暫し……絶句。


華……重症だ……


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