この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「銀こそ、眠れないの?」
「こんな薄い煎餅布団じゃぁ、体が痛くて寝れねぇよ」
「昔、私のアパートに居た時のお布団もこんな感じだったのに、あの時は熟睡してたじゃない」
少し間があって、銀は「そうだったかな……」と答えた。
銀、私と暮らしてた頃のこと忘れちゃったの?
そうだよね。もう過去のことだもの。そんなこと分かってる。分かってるけど、なんだか寂しい。
そんなこと思ってる自分が嫌で、私は布団を頭までスッポリかぶると銀に背を向ける。すると、また彼の声が小さく響く。
「ハナコの父親のこと……今でも好きか?」
「えっ?」
「好きなのか?」
華の父親? それは、銀、あなただよ。あなたが父親なんだよ。
「…好き…今でも…大好き…」
それは、私の本心だった。ホントは、ずっと前から気づいてた想い。でも、言ってはイケナイ想い。
銀と別れてからも、私は変わらず銀のことが好きだった。
「……そうか」
それが銀のことだなんて、きっと、あなたは気づかない。気づいて欲しくない。
華が産まれた時、私は決めたんだ。この子は私だけの子供父親は居ないんだって……それに、今の銀と私じゃ、とても釣り合わない。
私たちはもう、別々の人生を歩き出しているんだもん。
そうだよね? 銀……