この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「私、今の銀のこと、まだよく分かんないもん」
「どういうこと?」
「銀のプライベート全然知らないし、彼女とか居るかも……だし」
この前、カフェで話しした時、もしかしたら私のこと…って思ったけど、気まぐれな銀だもん。期待なんかしたら、またショックを受けるのが関の山。もうあんな辛い想いしたくない。傷つくのは嫌だ。
「彼女ねぇ~そりゃあ、あの容姿で鳳来物産の部長ときたら、周りの女は黙ってないわよね。
それに、ここに来るのは週に3日くらいだし、それ以外の日は何してるか分からないものね」
キャサリンママも肩を落とし目を伏せる。
「それに、銀は自由人だから、華が自分の子供だって分かったら面倒くさいって思うかも。そしたら、私たちのことが重くなって離れてくかもしれない」
「ミーメちゃん……」
私は今のこの状態を壊したくなかった。時々銀が来てくれて、華と遊んでくれる。そんな日常が何より大切になってたんだ。
「おい! ミーメ、俺は帰るぞ」
「はいはい」
「"はい"は1回だって言っただろ」
「うるさいなぁ~」
「なんか言ったか?」
「別に……」
なんで私、こんな男のこと好きなんだろう。
お店を出て、タクシーが拾える場所まで送ろうと並んで歩く。
「銀、飲み過ぎたんじゃない? フラついてるよ。大丈夫?」
「大丈夫じゃないって言ったら……何してくれる?」
「な、何って……何して欲しいのよ」
ネオン煌く夜の街。行き交う人々の声がビルの谷間を流れ響く中――
私は銀に抱きしめられていた……
それと同時に、漆黒の闇から落ちてくる冷たい雫。
ソレは瞬く間に激しくアスファルトを打ちつけ、私たちふたりを濡らしていく……
「ぎ……ん、雨……んっっ……」
濡れた唇が私の言葉を遮る。
それは、忘れたことなどない。懐かしい銀の唇――