この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
○甘い誘惑
「今日のミーメちゃん変だよ。昨夜はずぶ濡れで帰って来るし、なんかあったの?」
これは今朝、キャサリンママに言われた言葉。確かに、今日の私はどうかしてる。
お茶碗に味噌汁を入れてたし、スカートを穿くのを忘れてた。
心、ここにあらず……これが今の私を表現するのに、ピッタリの言葉だ。
理由は分かってる。昨夜の濃厚ちゅーだ。
直後は酔ってたのと興奮してたのもあって、ワケが分かんなくなってた。
でも一夜明け、冷静になって考えてみると私はとんでもないことをしてしまったんだということに気付いたんだ。
私の気持ちより、銀がなぜあんなことしたのか、そのことの方が気掛かりだった。
銀は本気で私にキスしたのかな?
昨夜、銀はかなり酔ってた。それは、私の苦い記憶を蘇らせる。そう、あの日の銀も酔っ払ってた。
銀を探し出し、彼の部屋へ行った時、酔っぱらって半分意識の無い銀に抱かれ目覚めた朝、彼女の存在に気付きショックを受けた私は、泣きながら部屋を飛び出した。
あの時に受けた心の傷はまだ癒えてない。
でも、銀が言った『ハナコの父親のことなんて、忘れちまえ…』あれって"華の父親を忘れて俺を見ろ!"ってことだよね?
「……んんん?」
いやいやいや、違う! 違う! 期待なんかしちゃダメだ。
たまたまだ。たまたまキスしたいと思った時、たまたま私が隣に居て、たまたまシちゃっただけのこと。だけの……ことだよね?
どうしても素直に認めることが出来ない。多分これは自己防衛。私は凄く臆病になってた。