彼に抱かれる理由
大学四年の夏、ゼミの飲み会の帰り道だった。

社会人になった先輩とすれ違ってばかりの私は悩んでいて、慧はそれを察していた。



「ねぇ、うちで飲み直さない?」

「え?あ、うん。」



ちょっとドキドキしたけど、慧のアパートに行くのは初めてじゃなかったし、深く考えずに返事をした。

なのに、慧は部屋に入るなり、私をギュッと抱きしめた。



「.....慧?」

「ねぇ、俺じゃダメ?」

「.....。」

「もしダメでも、綾さんが寂しい時は傍にいさせてくれる?」
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