actually


某有名オフィス街、その中でもかなり大きなビルを目指して歩く男女がいる


男はクッキングパピーのような大きな体で窮屈そうにスーツを着て、女は少しおどおどした様子で男の影に隠れるようにして歩く

ビルの出入口のすぐ上にはデカデカと『NUKAZUKE』という会社名が書かれている


ビルの中に入るときれいな笑顔を張り付けた受付嬢に声をかける



「先日、お電話した〇〇企業の者です。」

男の体格に似合わない温厚な声色に受付嬢は
張り付けた笑顔を一瞬崩したもののすぐに元に戻し手元のファイルをパラパラめくりながら男に問い掛けた


「お待ちしておりました。確認のためフルネームをお願いします。」

「山田新司です」


「・・・・はい、ありがとうございます。それではこちらの物を首からさげ、あちらのエレベーターから15階へお上がりください。」



それは、学校等に保護者が入るときに首から下げているホルダー

男、山田は女に二つのうち一つを女に渡しながらエレベーターに向かう。

そして女は地毛であろう色素の薄い、肩ぐらいまでの長さの髪の毛を揺らしながらやぱり少しおどおどした様子で辺りを見回す


「生田目、初めての"営業"なのは分かるがもう少し堂々としていられないのか」

山田は上司らしく、しかし少し呆れながら女、生田目(ナマタメ)に声をかける

生田目は垂れ目ぎみのつぶらな瞳で山田を見つめる

「そんなこと言われたって・・・山田さんと違って慣れて無いのだから仕方ないと思います」

「そうかも知れないが・・・まあ成功させてくれれば何でもいいさ。さ、エレベーターだよ」



エレベーターに乗るだけにも関わらず表情が固くなった二人


さあ、本当の仕事の始まりだ
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