かけぬける青空は、きっと君とつながっている
「つーか、泊まりたいんだけど、ココ。でも、さっきから呼んでんだけど誰も出てこないんだよ。不用心すぎんじゃね? まあ、安そうだからこんなもんかとは思ってるけどな」
思ってもみなかった再会に頭がついていかずに固まっていると、バックパッカーさんは、そんなあたしにはお構いなしといった感じで話を進め、こちらを見上げてくる。
このとき初めて彼の顔をまともに見ることになったのだけれど、態度や雰囲気から、歳はあたしより上なようで、だいたい20歳前後。
その肌は“日焼け"という言葉を知らないように白く、目にかかるほど伸びた前髪の奥からのぞくのは、神経質そうな切れ長の黒い瞳。
体つきもやや細く、眼鏡や図書館が似合いそうなインテリ系か、あるいは白衣と試験管が似合いそうな理系かという、そんな印象だった。
少なくとも、バックパッカーよりはそっちのほうがイメージしやすく、尚且つぴったりだ。
……ただ、さっきといい、今といい、口はなかなか悪そうだけれど。
「おい、聞いてんのかよ」
「……は、はい、ご宿泊ですね。それではまず、お名前とお電話番号を頂けますか? あと、ご住所も頂けると助かります。今、ペンと宿泊名簿を持ってきますので」