かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
はっと我に返って、怪訝な表情をしているバックパッカーさんに急いで宿泊の説明をする。

ほかの民宿はどうかは分からないけれど、汐凪では、あとで宿泊のお礼を添えたハガキを出すのが昔からのスタイルだ。

そのため、差し支えがなければ、名簿には住所まで記入してもらっている。


「すみませんっ。お待たせしました、ここにお名前とお電話番号と、よろしかったらご住所もご記入ください。あとで祖母から押し花のハガキをお送りしますので」


カウンターの中から名簿とペンを取り出し、急いで戻る。その間、おそらく十数秒。

バックパッカーさんはちょうど水分補給を終えたところで、水の入ったペットボトルを体の脇に置くと、手の甲で口元を拭った。


「へぇ。お前、ばあさんと民宿やってんだ」

「あ、いえ。ここは母の実家で、あたしは夏休みの間だけ手伝いに来ているんです」

「高校生? 何年?」

「2年です」


社交辞令的に世間話をしている間も、彼は休むことなくペンを走らせる。

うわぁ、綺麗な字……。

“間宮 航"ーーどうやらこれが、バックパッカーさんの名前らしい。


「ん」

「はい、ありがとうございます。ええと、下のお名前ワタルさんですか?」

「いや、コウ」
 
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