かけぬける青空は、きっと君とつながっている
優しい意地悪
この地域では、お盆を過ぎれば、風には急に秋の気配が混ざりはじめる。
おじいちゃんやご先祖様のお墓参りを家族で済ませると、とたんに秋めく気候の変化に、そろそろ夏も終わりなのだと実感する。
間宮さんと満月を見に行く約束の日は明日となっていて、ここ数日、夜は曇りになることが多い空模様を心配しているあたしは、天気予報のチェックに余念がない。
「なによ、そんなに天気予報ばっかり気にしちゃって、もしかしてデートでもするの?」
「……うわっ、お、お母さん!」
「ぷ。図星でしょ」
「ち、ちがっ」
お昼の天気予報を食い入るように見ていたら、突然後ろから声をかけられて、思わずソファーからお尻が浮いてしまった。
相変わらず間宮さん以外のお客さんはいない汐凪では、代わりにお母さんが居座っている。
「はいはい。お母さん止めないから、デートでもなんでも好きにしてちょうだい」
「だから違うって!」
「あら、そう」
「……」
すっかり茶化されたあたしは、なぜか隠すようにテレビの前に立ちはだかったまま、足取り軽く台所へ向かうお母さんの後ろ姿に「違うからねっ!絶対!」と念を押す。