かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
“まみや こう"さん。

頭の中で名前を反すうする。


嫌がるお客さんもいるから一概にいいとは言えないけれど、汐凪にいる間は、親しみを込めて下の名前でお呼びするのが、おばあちゃんのポリシーだったりもする。

読み方が何通りもあるときや漢字が難しいときは、あとで失礼がないようにその場で確認しておくこと、昔からそう言い付けられていた。

……あたしは、民宿の手伝いは好きなくせに引っ込み思案なところがあって、おばあちゃんのようには、なかなか呼べないけれど。


「では、さっそくですが、お部屋にご案内しますね。お部屋は全て2階で、間宮さんには『潮風の間』にお泊まり頂けたらと思います。お荷物はあたしが持ちますので、こちらにどうぞ」


そう言って、間宮さんの座高ほどもあるリュックを手に取り、肩にかける。

すごく重そうだけれど、果たして、あたしにちゃんと部屋まで運べるだろうか……。


「いい。マジで重いんだ、これ」


すると、スッと横から手が伸びてきて、あたしに代わって間宮さんがリュックを背負った。


「それよりあんたは、落とした袋、早く拾ったほうがいいんじゃねぇの?」

「あ!忘れてました……」

「ドンくさ」

「す、すみませんっ」
 
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