かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
そして、民宿に戻ると、間宮さんは早々に部屋に引き上げ、あたしは晩ご飯作りの手伝いに加わることになり、いつの間にか、間宮さんが浮かない顔をしていたことも忘れてしまった。

あたしの頭の中を占めているのは、ただ明日の満月だけで、間宮さんと一緒に見るとき、どんな雑学を話そうかな、と、それだけだ。


「魚もいいけど、やっぱり肉もいいっすね」

「でしょう? たくさん食べると思って多めに作ったから、おかわりも好きなだけいいわよ」

「ありがとうございます」


それに、部屋で少し休んで台所に降りてきた間宮さんは、お母さんの「おかわりは?」という申し出に3回も生姜焼きを追加し、ご飯もモリモリ食べるもので、図書館からの帰り道にしていた浮かない顔は少しも見えなかった。

だからあたしは、間宮さんの「久しぶりに頭を使って疲れただけだ」という言葉をそのままの意味に解釈したし、あまりにもいい食べっぷりに、さすがは男子……!と感心もした。


いよいよ明日は満月だ。

赤い満月が見られるかどうかは、月の気分次第というところだと思うけれど、満月のようにまん丸なプチトマトを頬張りながら、早く明日の夜にならないかな、と、そればかりを考える、だいぶせっかちなあたしだった。
 
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