かけぬける青空は、きっと君とつながっている
と……。
「いいこと、教えてやろっか」
ふいに間宮さんがそう言った。
思わず顔を上げると、月明かりに照らされている間宮さんの顔は、昨日の浮かない様子になっていて、否応なしに胸がざわつきはじめる。
いいこと、という言葉とは裏腹に、間宮さんのその様子から、いいことではないことを悟る。
「たぶん俺は、どんなに綺麗な海や満月を見ても、心から満たされることはないと思ってる。好きでもなく、嫌いでもなく、ただ……怖い」
「え」
「本当の暗闇って知ってっか? あれは想像を超える恐怖だ。一度、そんな夜を体験してしまったら、トラウマにもなるわ、そりゃ」
「……、……」
何も言葉が出なかった。
身じろぎをしたわけでもないのに、バッグの中の貝殻がカチャリ、と小さく擦れる音がして、ついさっきまで夢中になって集めていたそれらが、急に空々しいものに思えてくる。
間宮さんの口調こそ、いつも通りの、少し不機嫌で平淡な調子なのだけれど、それがかえって「本当の暗闇」という表現をよりリアルに感じさせ、想像せずとも、とても……怖い。
「ああ、あと、今もこれからも、俺は誰ともどうにかなる気はないからな。つーか、俺なんてやめとけ。ろくな男じゃねーんだ、マジで」