かけぬける青空は、きっと君とつながっている
ーーー
ーーーーー
ーーーーーーー
やがて、大きな満月に雲がかかりはじめる。
天気が少し、変わってきたらしい。
無風だった空気にも、ほのかに潮の香りが混ざりはじめ、初秋の夜は、徐々に更けていく。
「間宮さん、もうそろそろ0時です」
これといって、特に時間を決めて満月を見に来たわけではなかったのだけれど、なんとなく、日付が変わるまでには民宿に戻ったほうがいいような気がして、携帯のディスプレイに刻まれている時刻を確認したあたしは、そう言った。
けれど間宮さんは、あたしの声が届いているのか、そうではないのか、まだ浜辺をふらふらと歩いていて、やがてたっぷり間をあけてから、こちらを見ずに「ああ」とだけ返事をする。
「……先に、戻っていますね」
「ああ、悪い」
「いえ」
間宮さんとの会話は、それきり途切れる。
ひとりにしてはおけないような危うさはあるものの、けれどあたしには、そばにいても何もできることはなく、しっかりと拒絶をされた今においては、立ち去ることくらいしかできない。
辛い、苦しい、重い、切ない、悲しい……ありとあらゆる負を表現する言葉のうち、あたしは今日、初めて間宮さんを怖いと思った。