かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
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やがて、大きな満月に雲がかかりはじめる。

天気が少し、変わってきたらしい。

無風だった空気にも、ほのかに潮の香りが混ざりはじめ、初秋の夜は、徐々に更けていく。


「間宮さん、もうそろそろ0時です」


これといって、特に時間を決めて満月を見に来たわけではなかったのだけれど、なんとなく、日付が変わるまでには民宿に戻ったほうがいいような気がして、携帯のディスプレイに刻まれている時刻を確認したあたしは、そう言った。

けれど間宮さんは、あたしの声が届いているのか、そうではないのか、まだ浜辺をふらふらと歩いていて、やがてたっぷり間をあけてから、こちらを見ずに「ああ」とだけ返事をする。


「……先に、戻っていますね」

「ああ、悪い」

「いえ」


間宮さんとの会話は、それきり途切れる。

ひとりにしてはおけないような危うさはあるものの、けれどあたしには、そばにいても何もできることはなく、しっかりと拒絶をされた今においては、立ち去ることくらいしかできない。

辛い、苦しい、重い、切ない、悲しい……ありとあらゆる負を表現する言葉のうち、あたしは今日、初めて間宮さんを怖いと思った。
 
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