かけぬける青空は、きっと君とつながっている
それは、間宮さんが抱えているであろう、大きな秘密の片鱗を知ったからで、きっとあたしには、とうてい理解が及ばないものなのだろう、ということがはっきりと分かったからだ。
おそらく間宮さんは、近々民宿を去るだろう。
明日か、あさってか、1週間先か。
それは間宮さんにしか決められないことだけれど、あたしがここでの夏休みを終え、新学期を迎えるように、間宮さんもまた、夏の終わりとともに新たな土地へ旅をするのだろうと思う。
間宮さんを引き止める権利など、あたしにあるはずはなく、さっきも言われた通り、民宿の人間と客、という関係を忘れてはならない。
ただ、ひとつだけ、わがままなことを思ってもいいのなら、民宿を出て行くときは、きちんと見送らせてもらえたら嬉しい、そう思う。
間宮さんに「俺なんてやめとけ」と言われて、目が覚めるような思いだったのだけれど、見送るだけなら、構わないのではないだろうか。
浜辺を出ても間宮さんを振り返らず、あたしは民宿へと続く長い坂道をひたすら上った。
月明かりに伸びていたあたしの影は、いつの間にかすっかりと消えていて、雲が完全に満月を覆い隠してしまったことを知る、午前0時。