かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「……起きたら間宮さんがいなくなっていた、なんてこと、ないといいんだけれど」


民宿に戻るまでの間に思うことといえば、そればかりのあたしは、やがて長い坂を上りきったところで、たまらずそう、口にした。

相変わらず、月明かりはない。

ぽつぽつと等間隔に並んでいる街灯の明かりだけを頼りに進む道は、普段歩き慣れている道とはいえ、うっすらと恐怖を覚える。

けれど、“本当の暗闇”を知らないあたしが怖がってどうする、と、気持ちを奮い立たせ、残りわずかとなった民宿までの道を進む。


民宿の玄関を開けると、当然ながら中はしーんと静まり返っていて、あたしが動くたびに立つ音だけが、建物の中にかすかに響くだけだ。

その静寂の中、そろそろと階段を上り、かつてはお母さんが自室として使っていたという部屋へ入り、浜辺で拾った貝殻をそのままに、早々に布団の中へ潜り込み、目を閉じた。

けれど、なかなか眠れず、結局は貝殻に詰まっていた砂を落としたり、磨いてみたり、机の上に並べてみたりして、時間を潰すこととなる。


1時間、2時間……どれくらいだろうか。

東の空がうっすらと明るくなりはじめた頃、ようやく1階に玄関を開ける音が聞こえ、足音の感じから間宮さんが戻ったのだと分かると、それと同時に、あたしはわずかな眠りについた。
 
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