かけぬける青空は、きっと君とつながっている
電話をかけてきた相手はハルだった。
着信は香ちゃんの名前だったのだけれど、ハルは携帯を持っていないことから、香ちゃんの携帯を借りてあたしに電話をしているらしい。
けれど、ハルの声からは明らかに元気がなく、それに加えて、焦っている様子も伝わってくるため、携帯を耳に当てるあたしの手にも自ずと力が入り、心臓がバクバクと嫌な音を立てる。
ハルが香ちゃんの携帯を借りている、ということは、少なくともケンカをしたわけではなさそうなのだけれど、不思議なのは、ハルの声に混じって電車の走行音が聞こえたことだ。
電車に乗ってデートに出かけるなら、わざわざあたしに連絡を取る必要はないし、デートスポットになりそうな場所なら、あたしよりハルのほうがずっとよく知っているはず。
それなら、どうしてあたしに電話を……?
ハルの意図することが分からないあたしは、押し黙るハルに続いて、言葉を飲み込んだ。
「俺たち、駆け落ちする」
すると、何十秒かの長い沈黙のあと、ハルが意を決したように、そう口にした。
ハルの隣からは、香ちゃんの「早くしないと見つかっちゃう」という声も聞こえてきて、どうやら2人が駅にいることは確実そうなものの、切迫した雰囲気がひしひしと伝わってくる。