かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「お。ここだな。この広場からだと、反時計回りに進んでいけば、わりとすぐだと思う」

「ですね」


間宮さんがキリン舎の場所を見つけてくれ、あたしたちは、さっそくそちらへ向かう。

反時計回りのルートは、この動物園ではややイレギュラーな回り方なようで、すれ違う人、すれ違う人、みな一様に広場を目指している。

あたしたちと同じ時間に園に入っていった人を見ても、あと1時間で閉園、という限られた中ではあっても時計回りに進んでいて、それは、帰ろうとしているだけではないのが窺えた。


「みんな、帰っていきますね……。もしも2人がキリン舎のところにいるとして、帰る場所を捨ててきた2人が、帰る場所がある人たちを見送るって、どんな気持ちなんでしょうか」

「くだらん。歩け」

「はい……っ」


夕暮れのせいだろうか。

なんとも切ない気持ちになり、すれ違ったカップルを振り向き、間宮さんに問うと、その間宮さんは、歩くスピードをいっそう速め、あたしのくだらない質問を一刀両断する。

ほんと、くだらない。

すでに数メートルの距離が空いてしまった間宮さんから、これ以上は離されまいと小走りでついていきながら、とにかく2人を見つけることが先だ、あたしがしっかりしなくてどうする、と、再び頭を切り替える。
 
< 165 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop