かけぬける青空は、きっと君とつながっている

崩れるポーカーフェイス

 
けれど、その日の深夜遅く、間宮さんも、普通の20歳の人間なのだ、と知ることになる。


疲れもあり、ぐっすり眠っていたはずなのだけれど、何かの拍子で突然ぱちりと目が覚めてしまったあたしは、お手洗いと、麦茶でも飲もうと思い、1階に向かうため、廊下に出た。

部屋を出たときから、すでに廊下には電気の明かりが少しもれていて、間宮さんは民宿に戻って早々に寝たはずなのだけれど、まだ寝付けずにいるのだろうということは分かる。

おばあちゃんの落語や漫談のCDを無理やり貸してから、少しずつ眠れるようになってきた、とのことではあるものの、まだ不眠症は治っていないのだ、と知って、胸が痛い。

ただ。


「マジで怖かった……」


ちょうど部屋の前を通りかかったとき、独り言ではなく、何かに話しかけているような口調でそう言っているのを偶然にも聞いてしまい、あたしの足は、そこで止まってしまった。

何がそんなに怖かったのかを聞くつもりは、もちろんなかったし、立ち聞きをするようなこともしたくはないのだけれど、どうしてか足が動いてくれず、とっさに息を殺してしまう。

と……。


「倒れたまま、目が覚めないかと思った。自分より相手のことばっかで、ほんっと可愛くないし。なんなんだよ、あいつ。バカじゃねーの」
 
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