かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
あのとき間宮さんが言った“本当の暗闇”というのが、月明かりや星明かりといった自然の明かりがなく、家や街や、人工物の明かりも全くない、それでいて、耳をすませても何も聞こえない静寂のことを指しているのだとしたら。

……そんな夜は、恐ろしすぎる。

ほのかな明かりや、少しの音があると比較的、眠りやすい、というのも、あたしの推測が正しければ、全くの“無”の状況を意図せず体験してしまったことが大きいように思う。

そうして、今まで間宮さんとともに取ってきた行動や、してきた会話を思い返していくと、考えられるのは、もうひとつしかなかった。


「……、……。あの、震災の……」


異様に声が震えてしまい、思わず口元に手を持っていくと、唇まで震えていることに気づき、たまらなくなったあたしは、そのまま手を上に持っていき、まぶたにぎゅっと押し当てる。

記憶に新しい、東日本大震災。

間宮さんは、その震災の被災者だ……。


まだそうだと決まったわけではないし、推測の域を出ないことは、否めない。

けれど、間宮さんが抱えている大きなものが、あの震災によってのものだとしたら……と考えていくと、今までの行動や会話の中には、それを示唆する事柄が多く含まれていることに思い当たり、今まで気づかなかったことのほうが、おかしい、とさえ思えてくるのだ。
 
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