かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
以前、間宮さんには、お母さんが民宿を訪れた日に話してはいたけれど、2人が長年にわたってわだかまりを抱えたままだった理由は、特に聞かなくてもいい、とあたしは思っている。

今が仲がよければそれでいい、というわけではないけれど、あたしが詮索することで蒸し返してしまったり、また変に関係がこじれてしまうよりはずっといいし、話したくなったときに聞けるよう、腹積もりだけしていようと思う。


間宮さんの秘密のことも、こういうふうに、待とうと決められて、きちんとその体勢が取れたなら、どんなにいいのだろう、と考える。

けれど、どうしてだろう、間宮さんのことだけは、そういうわけには……いかないらしい。


間宮さんのことを知りたいとか、震災のことを聞いて、少しでも傷つき、苦しい心を軽くしてあげたいとか、対等か、それ以上の立場から、間宮さんに踏み込みたいわけじゃない。

かといって、変に下手に出て、ああ、俺は同情されているんだ、とも思われたくはないのだ。

迷宮のような、この複雑な気持ちの落ち着き場所を、あたしはまだ、見つけあぐねている。

と……。


「大丈夫なの? 菜月。本当に顔色がよくないわよ。熱でもあるんじゃないの?」
 
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