かけぬける青空は、きっと君とつながっている
幼いながらも、なんとなく、触れてはいけないことなのだ、と感じていたし、もしかしたらあたしの勘違いかもしれない、とも思っていて、触れないまま、今年の夏を迎えたのだ。
けれど今年は、例年とは違う。
間宮さんという1人のお客さんが、あたしたちの間にあった溝を埋めてくれ、お互いに歩み寄るきっかけを作ってくれた。
あたしたち家族の中のことだけで言えば、今年の夏は、大いに実りある夏だったと言える。
「それじゃあ、あとはよろしく頼みます」
「気をつけるんだよ」
それから少しして、お母さんは支度を整え、民宿の玄関先でおばあちゃんにあいさつをする。
何週間か前、不機嫌かつ、田舎を嫌っているふうな険しい顔をしてここへ訪れたときと同じ服装をしているものの、腕に抱えているのは、野菜がたくさん入った大きな紙袋。
それに加えて、最後におばあちゃんが差したひまわりの花が1本、袋から飛び出ているため、なんだかおかしくなり、つい笑ってしまう。
「……、……。……行くわよ、菜月」
「うん」
紙袋を抱えて駅へ歩きだしたお母さんの背中を追いかけるようにして、あたしも歩きはじめながら、おばあちゃんに「ちょっと見送ってくるね」と言い、スーツケースを引く。