かけぬける青空は、きっと君とつながっている
“3.11” side.航
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こいつにだけは話してもいいかもしれない、そう思いはじめたのは、いつからだっただろう。
少なくとも、昨日、今日の話じゃない。
自分でも定かではないけれど、菜月や、彼女の家族、ハルたちと触れ合っていくうちに、少しずつ少しずつ、自分の胸の中だけに留めておくには限界を感じるようになってきていて、いい機会だと踏んだ俺は、もうすぐこの町を出る置きみやげとして、話してやろうと思った。
もしかしたら、今朝の一件が引き金になったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
そこは、あまりこだわらずにいようと思う。
「おい、さっさと歩けよ」
「すみません、道がぬかるんでて……。すぐに」
展望台を出て、下り道。
海へ向かって歩いている俺の後ろを、だいぶ距離をあけてついてくる菜月は、表情こそ見えないものの、声の調子から、やはり俺が何を話すつもりなのかを敏感に感じ取っているようで、緊張し、恐怖している様子が簡単に窺えた。
それもそのはずだ。
今から俺が話そうとしているのは、自分でもまだ、整理がつけられていない“あの日”のこと。
あの日と、それからの地獄のような日々だ。