かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「みんな、それぞに進路が決まっていて、卒業式もしたばかりだったんだぞ? 沿岸に住んでいたってだけで死ぬなんて、どう考えてもフェアじゃないだろ。おかしいんだよ、全部が」

「……、……」

「こんな俺なんかより、ずっといいやつらだったんだ。なのに、どうしてあいつらは死んで、俺だけが生き残ったのか、全然分かんねー」

「間宮さん、それは……っ」


静かに話を聞いていた菜月だったが、どうして俺は死ねなかったのか、というところだけは、はっと顔を上げ、そう否定してくる。

「間宮さんが生きていたおかげで、あたしは出会えました」なんて言いたいのだろうか。


菜月にとっては、そうだったのかもしれない。

けれど俺にとっては、菜月に出会えたことは偶然以外の何物でもないし、こうして震災の話をしているのも、いつもの気まぐれだ、と思っていないと、ここを離れづらくなる事情がある。

心は噛み合わないのだ、絶対に……。


「まあいい。今から話すのは、俺が見てきた震災だ。知ってると思うけど、被害の範囲は広いし、俺が話すことだけが“3.11”じゃない。それだけは誤解しないように聞いてくれ」


言うと菜月は、やや間隔をあけてから、静かにひとつ、大きく頷き、すっと海を見据えた。

それを見た俺は、あの日を語りはじめる。
 
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