かけぬける青空は、きっと君とつながっている
俺も、どちらかといえば、女性たちのほうに考えが寄っていて、ちょっと家に戻ったくらいで死ぬもんか、と思ったりもしている。
ばあさんと違って走れるし、走ればそれなりに速いし、もし津波が押し寄せてきたとしても逃げきれるんじゃないか、とさえ思った。
安易な考え方かもしれないけれど、さっきの近所のおじさんや、ばあさんが、津波に過敏になりすぎている可能性も捨てきれない、そんなふうに、一連のやり取りを分析した俺だ。
そんなことがありつつ、しばらくの間、避難場所に指定されている高台の集会所を目指し、緩やかな坂道を上っていると、突如、後ろのほうから、悲鳴と、どよめきが起こった。
何事かと振り返ってみると、坂の下のほうを避難している人たちは、みな一様に坂の近くを流れる川を振り返り、呆然と立ち尽くしている。
見れば、黒い水が川をさかのぼってきていて、その勢いは、ここから見ているだけでも凄まじいものがあり、俺の先を歩いていた人の中からは「早く!走って逃げろー!」と、必死な様子で呼びかける男性の声も聞こえた。
津波だ……。
即座にそう思った。
川をさかのぼってくる黒い水は、川から溢れ出て、道路を大蛇のように這い、逃げまどいはじめた人たちのすぐ後ろまで迫る。