かけぬける青空は、きっと君とつながっている
さっきの女性たちも、お互いに顔を見合わせているだけで、言葉も出ない様子だ。
もし、ばあさんに止められなかったら、女性も俺もあの水で身動きを取れなくさせられ、今頃は家の中で孤立していたかもしれない。
そう思うと、言い表しようのない恐怖が体の底から湧き上がり、否応なしに体が震えた。
いや。
孤立しただけなら、まだいいかもしれない。
もし家ごと流されてしまったら……。
年寄りの言うことは聞いておくものだ。
そう思わざるを得ない状況を目の当たりにし、再び前を向き、坂を上りはじめた俺の足は、先ほどまでとは打って変わり、早いものだった。
「おばあちゃん、行きましょう……っ」
「俺が背負います」
「……あ、ありがとう」
水がここまで来るかもしれない、そんな焦りを感じはじめたたのだろう、女性はばあさんの手を取り、歩かせようとしたものの、やはり、ばあさんの歩調は遅く、見かねた俺は、背負うと申し出ると、女性と並んで歩きはじめた。
もう一人の女性のほうは、気が気ではなくなりはじめ、じいさんは海のそばの施設にデイサービスに行っているとかで、どうしよう、どうしよう……と、そればかりを繰り返す。