かけぬける青空は、きっと君とつながっている
と、そこへ、かすかに声が聞こえはじめる。
「は……ゆりの皆さんは全員無事です!老人ホーム、はまゆりの皆さんは、全員無事です!早く逃げてください!津波が押し寄せています!」
ゆるゆると長蛇の列を作って車で避難している人たちの後方から、拡声器で呼びかけていると思われる男性の声がだんだんと近づいてきて、避難できたんだ、よかった……と、一刻を争う緊急事態ながら、ほんの少しだけ気が緩む。
もしかして、と思い、横を見ると、デイサービスに行っているじいさんの安否を案じていた女性は「はあ、よかった……」と今にも泣き崩れそうになっていて、そこを隣の女性に支えられ、なんとか歩けている、という状況だった。
俺たちはついている、そう思う。
早めに避難をはじめたおかげで、もうすぐ集会所が見える位置まで坂を上ってきているし、今俺が背負っているばあさんが止めてくれたおかげで、津波に巻き込まれずに済んでいる。
また、拡声器でじいさん、ばあさんの無事を知らせてくれる男性のおかげで、集会所に着けば会える、という安心感を与えてもらっている。
避難している人の中には、この声でずいぶん救われている人も、けして少なくないだろう。