かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
ここに出向く前も、俺がいる集会所に家族の安否を尋ねに来ていた人がちらほらといて、避難者名簿を食い入るように見つめていたのだ。

その人たちが探している名前があるかどうかは分からないけれど、願うのは、ただ1つだけ。

どうか名前があるといい……それだけだ。


「貝塚……貝塚」


体育館脇の壁に貼り付けてある紙に書かれた、避難者の名前を指でたどりながら、秀斗がいるかどうか、俺も一心不乱に確認していく。

けれど、同じ名字の人は何人かいるものの、期待とは裏腹に、秀斗の名前も、秀斗の家族の名前も、残念ながらそこにはなく、深くため息をつくと、各教室に散らばっている人たちの名前を確認するため、校舎に入っていった。


この小学校は高台にあるため、校舎の中を見たところ、津波の被害は免れているようだった。

しかし、分厚いはずのコンクリートの壁には大きな亀裂が入っていて、階段を上っていく途中の踊り場で、それの1つにブルーシートをかけている人たちの脇を通り過ぎる。

どこの建物もそうだと思うが、こういう傷を目にするたび、いつもは穏やかだった自然が突然引き起こした地震の恐ろしさや、津波のむごさなどを、まざまざと見せつけられたような気になってしまい、気がどんどん滅入っていく。
 
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