かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「やっぱり、いなかった、か……」


秀斗の家族の名前もないようで、なんとも言えない落胆感が、歩き続けて疲労が溜まっている体から、さらに体力を奪っていくようだ。

こういう、お年寄りだけの小さな避難所もあるのだと話では聞いて知ってはいても、実際に目にすると、なんというか……つらい。

寒さ対策はできているだろうか、夜の明かりはどうだろう、食事は十分に摂れているか、避難所の環境は……と、考えればきりがなく、かといって、今の俺にはどうすることもできないもどかしさが、さらに苛立ちを煽る。


俺が経験していること、見ているもの、感じている気持ちだけが、震災の全てだなどとは、これっぽっちも思ってはいない。

ただ、被災した人の中でも、俺は特に恵まれた境遇にあることだけは確かなものの、それでも絶望感が拭いきれないのはどうしてだろうか。


「……お邪魔しました」


先ほどと同じお年寄りに声をかけ、夕暮れが押し迫っている中を、集会所へと歩きはじめる。

福島の原発では、水素爆発が起こり、ろくに安否確認もできないまま、避難を余儀なくされている人たちもおり、そういう面でも、被害の全貌はまだ明らかにはなっていないのだ。
 
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