かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
そもそも『考えてくれないか』って、母さんの実家に世話になる方向で2人の間では決まっている、そんなふうな言い方じゃないか。

なんだよ、それ。

なんなんだよ、それは。一体……。


「親父、ここを捨てる気……」

「航、誤解しないで聞いてね。あなたが友だちを探して避難所を回っていることは知っているし、その気持ちを尊重したいと思っているわ。でも、あなたの将来のことも考えないと。お母さんたちには、その義務があるの」

「……っ」


親父に、ここを捨てる気なのか、と言い終わる前に、母さんがそう、早口で口を挟む。

家が半壊してしまい、住むことも修理もままならない中での、母さんの実家からの申し出は、とてもありがたい話だと俺も思う。

でも仲間の安否は、まだ誰も分かっていない。

それを、どうして今、逃げるように、または、ふるさとを捨てるように、母さんの実家に行かなければならないのだろうか。


頭では、母さんたちが俺のことを思って提案してくれているのは分かっているし、これからのことを考えていく上では、少しでも落ち着いた環境で……というのも、分かっているつもりだ。

けれど気持ちが、頭に追いつかない。
 
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