かけぬける青空は、きっと君とつながっている
「俺はまあ、体は無事だったし、運良く仮設住宅にも入れたし、家も思い出の品も流されちまったけど、まだ避難所生活をしている人や、全村避難とか全町避難で故郷を出て行かなきゃならない人たちに比べれば、全然マシで、幸せなんだと思う。感謝するべきなんだ。でも、なんで俺が……って、やっぱり思うんだよ」
「……うん」
「沿岸部に住んでいただけで、こんなふうになるなんて、フェアじゃないだろ、とか普通に思う。30メートルの津波なんて誰が想像するよ。逃げたって逃げきれないだろ。それを想定外だったなんて言うなよと思う。マジでさ」
「そうだな。想定外ってのは、俺もどうかと思う。その言葉でうまく丸め込まれているような気分になるし、なんだか嫌な言葉だ」
その“想定外”で、東北や関東の太平洋側の沿岸部の甚大な被害を片付けてほしくなはい。
俺も前から違和感を持っていて、ニュースで見聞きするたび、いい気分ではなかったのだ。
人間は自然を相手にして生きてきて、沿岸部に住むという時点で津波に対する対策や覚悟はしてきている、そのことは、秀斗だって十分に分かっている上で、どこにぶつけたらいいか分からない苦しい胸の内を俺に語っている。