かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「だからな」と、間宮さんは続ける。


「俺、行くんだ」

「……どこに?」

「青い空の向こう側」

「……、……」


しばらく考えても、間宮さんの言った意味がよく分からなくて、それきり会話も途切れてしまい、あたしたちが歩く足音だけが、秋の虫が奏でる音色の中にそっと紛れる。

そのうち民宿の建物が見えてきて、少し歩調を早めた間宮さんの斜め後ろをついて歩いた。


民宿では、いつも通りの食事を用意していたおばあちゃんが、いつも通りの様子でテーブルに招き、3人で遅めの夕食を食べた。

その席でも、おばあちゃんはついぞ“導きの蛍”のことは口にせず、また、間宮さんもあたしも山の奥で見たことは口にしなかった。


ただ、3人とも、思うことは一緒だ。

“導きの蛍”は、いる。

もちろん、実際に蛍を目にした間宮さんとあたしは、それを否定するだけの材料はなく、信じているけれど、おばあちゃんもきっと、以前に見たことがあるのだ、と、そのとき確信した。


あたしの勝手な思い込みなのだけれど、おばあちゃんが会いたいのは、あたしが生まれる前に亡くなったおじいちゃんで、おじいちゃんに対する深い愛が、蛍の導きを受けたのだ、と。

そう思う。
 
< 354 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop