かけぬける青空は、きっと君とつながっている
「だからな」と、間宮さんは続ける。
「俺、行くんだ」
「……どこに?」
「青い空の向こう側」
「……、……」
しばらく考えても、間宮さんの言った意味がよく分からなくて、それきり会話も途切れてしまい、あたしたちが歩く足音だけが、秋の虫が奏でる音色の中にそっと紛れる。
そのうち民宿の建物が見えてきて、少し歩調を早めた間宮さんの斜め後ろをついて歩いた。
民宿では、いつも通りの食事を用意していたおばあちゃんが、いつも通りの様子でテーブルに招き、3人で遅めの夕食を食べた。
その席でも、おばあちゃんはついぞ“導きの蛍”のことは口にせず、また、間宮さんもあたしも山の奥で見たことは口にしなかった。
ただ、3人とも、思うことは一緒だ。
“導きの蛍”は、いる。
もちろん、実際に蛍を目にした間宮さんとあたしは、それを否定するだけの材料はなく、信じているけれど、おばあちゃんもきっと、以前に見たことがあるのだ、と、そのとき確信した。
あたしの勝手な思い込みなのだけれど、おばあちゃんが会いたいのは、あたしが生まれる前に亡くなったおじいちゃんで、おじいちゃんに対する深い愛が、蛍の導きを受けたのだ、と。
そう思う。