かけぬける青空は、きっと君とつながっている
●6th.BLUE
恋、を知る
「そ、んな……」
部屋は、以前のまま。
間宮さんが汐凪に泊まりはじめる前の姿に、そっくりそのまま、戻っていた。
出て行く、出て行く、とは思っていたものの、本当は心の準備すら全然できていなかったのだと、元通りの部屋を見て、初めて気づく。
布団は綺麗に畳まれ、部屋の隅に置いてあり、開け放たれた窓からそよぐ風になびくカーテンの間から見えるベランダの物干し竿は、いつも必ず何枚か干してあった間宮さんの服はなく、そこから見える海が、やけに眺めがいい。
机の上も、掃除に入ったとき、一番に目につくのは散らかり放題なそこだったのに、備え付けのメモスタンドとペンが置いてあるだけ。
洗面台だってそうだ。
歯ブラシ、歯磨き粉、洗顔用具に、ひげ剃り、タオル……当たり前だけれど、間宮さんの所持品の全部がすっかり消えていて、洗面台の存在のそのものが、妙に空々しい。
「……いない、どこにも。ない、全部」
一通り、部屋を見渡し、何から何まで間宮さんに関係するものがなくなっている、という状況をゆっくりと理解していった後、あたしはとたんに、とてつもなく大きな喪失感に襲われる。
「さよなら」さえ言わせてもらえないの?
言ってもらえないの……?