かけぬける青空は、きっと君とつながっている
先ほどから、どこか腑に落ちない顔をして黙っていた香ちゃんが、そう口にする。
あたしもちょうど、ひとりで泣いていたときから同じような疑問を感じていて、香ちゃんと目を合わせたあと、改めてハルに視線を投げた。
「それ、逆だと思う。香や俺は、たまにしか会わなかったし、別物だと考えるとして、菜月の場合は“菜月”だからじゃねーの? 別れるのが辛かったから、あえて何も言わないで出て行ったんだよ。そういうやつだと思う」
「あたしだから、何も言えなかった……」
噛みしめるように、ハルの言葉を反すうする。
「うん。見てたら分かるよ、あいつ、菜月のことを本当に大事に思ってる。じゃなかったら、震災のことなんて話さなかっただろうし、好きにはなるな、なんて言わなかったはずだ。あいつは変えてもらったんだよ、菜月に」
「あたしも、そう思う」
ハルに続き、香ちゃんも深く納得した口調でそう言い、あたしの手をきつく握りしめる。
そして「菜月ちゃんだけには全部を話しておきたかったんだよ、きっと。あたしだって、家のことを春人君に相談してたし、それだけ心を許してたってことだと思う」と柔らかく微笑む。