かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
あたしはそれに「うん」とも「そうかな」とも明確な返事はできず、曖昧に笑い返しただけだったけれど、間宮さんがいなくなった『潮風の間』で、2人に代わる代わる慰めてもらっているうちに、ある思いがふっとこみ上げた。

間宮さんと出会えたことも、ひと夏の間に起こった様々な出来事も、さよならさえ言ってもらえず、言わせてもらえず、別れてしまったことも、全部、全部、受け入れよう。

一緒に過ごした時間は、けして偶然ではなく、気まぐれでもなく、無駄ではなかった、と。


間宮さんの心中は、いくらあたしたちが推測を重ねても、間宮さん本人にしか本当のところは分からないだろうし、もしかしたら、間宮さんだって自分の気持ちが分からないまま汐凪を出ていくことを決めたのかもしれない。

けれど、全てを受け入れ、無駄ではなかったと思うことで、あたしの心は格段に軽くなり、いつも通りに笑えるようにもなった。


恋の痛みは、今はまだ癒えそうにない。

けれど、前を向けば、部屋の窓からは真っ青な空と海がどこまでも広がっているのが見え、間宮さんもこの空の下をともに生きているのだ、と、なんだか壮大なことを普通に思えてしまうのだから、自然が持つ力は偉大だ。
 
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