かけぬける青空は、きっと君とつながっている
「……菜月? 行くよ?」
少しぼーっとしていたらしい。
名前を呼ばれて声のするほうに顔を向けると、5メートルほど離れているだろうか、そこから明梨が不思議そうにあたしを見ていた。
「うん、今行く!」
先生からさっそく手渡された、新しい匂いのする楽譜を胸の前に抱き直したあたしは、そう返事をし、追いつくまで待っていてくれた明梨と並んで教室へ続く廊下を歩き出す。
空は今日も青い。
その空は、あたしたちみんなの上に平等にあって、世界のどこにいても、つながっている。
あたしはこの街で息をし、ハルや香ちゃん、おばあちゃんたちは、あの海沿いの小さな町で、同じように息をしている。
間宮さんだって、きっと、旅先の新しい町で、あたしたちと同様、息をしているはずだ。
だから大丈夫。
来るべき時が来たら、必ずまた、どこかで出会えるーーそれが、あたしの全てを変えてくれたあの海沿いの小さな町だったら……。
すごく素敵なことに思う。
「ねえ、本当は夏休みに何があったの?」
「ふふっ。……秘密」
「菜月のケチ」