かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
彼女さんは“この子"であたしは“こっち"か……。

当たり前のことだけれど、呼び方に差があるのを聞くと、改めて胸がきゅーっと痛くなる。


「はじめまして、高坂です。今、春人君も言ったけど、同い年だし、香って呼んでね」

「こちらこそはじめまして、小菅菜月です。あたしのことも菜月って呼んでね。民宿を手伝う夏の間しかいないけど、仲良くしてね」

「ありがとう、菜月ちゃん」

「ううん。よろしくね、香ちゃん」


ああ、可愛いなぁ……。

素直に思う。

ちょっと頬を赤らめながら気恥ずかしそうにはにかむところなんか、まさにそれだ。


見た目や仕草、雰囲気もそうなのだけれど、香ちゃんはちゃんと“女の子"している。

あたしとは違って、例えばさっきみたいなときも、差し出された千円札を「ありがとう」と受け取れるような、素敵な子なのだろうと思う。

……単にあたしが卑屈になっているだけかもしれないけれど、すごく素敵な子に見えて、羨ましいなと思ったし、同時に憧れた。


「じゃあ、菜月、俺らはこれで。今から隣の図書館で勉強教えてもらう約束なんだ」

「あ、ごめん、邪魔しちゃったね」

「いや、全然。先に何か飲もうか、ってことになって寄ったところだったから、大丈夫」
 
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