かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
「さっきからお前、なんかブツブツ言いながらニヤニヤ笑ってっけど、頭大丈夫デスカ?」


まだまだ続く坂の途中で、上ってきた人とすれ違いざまにそんなことを言われてしまった。

一瞬びくっとして足が止まる。

けれど次の瞬間には急激に恥ずかしさが込み上げてきて、あたしは顔を見られないようにうつむき、逃げるようにして魚勝さんまで走った。


「一体何だったの、さっきの人……」


魚勝さんでカツオのタタキを受け取り、民宿へ戻る道すがら、ふと立ち止まったあたしは、あごに指をかけながら独り言をこぼした。

魚勝さんのご主人に覚えている限りの特徴を伝えて、見たことがないか訊ねたけれど、あいにく見覚えがないそうで手がかりはない。


「たぶん旅行の人だと思うけど、もう会うこともないだろうし、忘れたほうがいいかなぁ」


初対面……というか、ただすれ違っただけなのにあそこまで言うのはひどいかな、とは思う。

でも、自分で思っていたよりも声が大きかったのかもしれないし、注意してくれたのだと捉えれば、言葉が多少キツかった部分は忘れたほうがよさそうな気がする。

と、結論づけることにした。
 
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