かけぬける青空は、きっと君とつながっている
大きなリュックには荷物がパンパンに詰まっていて、まるでバックパッカーのような姿。
そんな格好で、うだうだ暑い中の長い上り坂。
イライラしていたのだとしたら、あたしの声は相当煩わしかっただろうし、文句の一つでも言ってやりたくなる気持ちも分かる。
「あ、そうだ、カツオ。早く持って帰らないと悪くしちゃう……っ!」
カツオは鮮度が落ちるスピードが速い。
せっかく新鮮なところをタタキにしてもらったのに、色や味を落としてしまっては、民宿のお客さんにも魚勝さんにも申し訳が立たない。
立ち止まってすっかり考え込んでいた頭を民宿に戻し、さっきのバックパッカーさんも上っていっただろう坂道を、あたしも急いだ。
ーーのだけれど。
「なんだお前、ここのヤツだったのかよ。それなら少し、荷物持ってもらえばよかった」
「バ、バックパッカー……さん」
いざ民宿に戻ってみると、坂道ですれ違ったさっきの人が、玄関先にどっかりと腰を下ろして流れる汗をタオルで拭いていた。
驚いたあたしは、思わず手を離してしまう。
ドサッ。
カツオのタタキが地面に落ちる。
ああ、しまった……。