かけぬける青空は、きっと君とつながっている
例えばお父さんだ。
お父さんは営業という仕事柄、帰りがすごく遅くて、相当疲れが溜まっているのだろう、たまの休みはたいてい寝ている。
あたしが知る限りのところではあるけれど、お母さんとの会話はほとんどない。
そして、何か話しかけても、お父さんは聞いているのか聞いていないのか曖昧に返事をするだけで、そういうときのお母さんの横顔は、寂しさと“こういうものか"という諦めで、なんともいえない切なさの濃い影ができていた。
次にあたしだ。
夏が近くなると特にだけれど、年中あたしはおばあちゃんのことを話題に出していて、お母さんはいつも困ったように言葉を濁していた。
それには、おばあちゃんとの仲をなんとか取り持ちたい、というあたしなりの考えもあってのことだったのだけれど、お母さんにとっては苦痛に感じる時間だったのかもしれない。
そういう、日々積み重なってきた、いろいろな寂しさから、お母さんはただ、解放されたかったのではないかと、今になって思う。
お父さんは豆腐のように押しても反応がなく、手応えも感じられず、あたしは口を開けばおばあちゃんのことばかり……。
そんな環境が何年も続けば、あんな行動に出たお母さんの気持ちは察して余りある。