君に本物を。


確かにここは利樹の地元で

あたしのかつての地元

でもあたしは今隣の県にいて

それを利樹は知らないはず

あたしは転校したから

誰にも言わないで消えたのに

こんなとこで会ったら意味ないじゃん

もしかして、転校したこと知ってて

声をかけてきたの?

あたしを嘲笑いたいの?

逃げ出したって嘲笑ってるの?



………なんで利樹なの?






「なぁなぁ、お前なんで学校こんの?」

利樹は首を傾げて聞く

知らないんだ、転校したこと

なぜか安心した

「転校した、から北中にはもう行かんよ?」

あたしは冷めた声で答える

利樹の表情が曇る

「やっぱり藤井たち…?」

あたしは答えない

なんでわざわざ出すの、名前

聞きたくもないんだから

そのくらいわかってよ

気がきかないのは相変わらずなようだ

少しだけあの時を思い出した

幸せに囲まれたあの時を………






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