俺様編集者に翻弄されています!
「私、氷室さんと映画観に行ってからわかったんです。今まで自分が見えていなかったものに……。だから、絶対今度の連載にはその話を書きたいって思ったんです。その小説なら読み手を虜にするような文章を書けるって、自分でもどこからそんな自信が湧いて出てくるのかわからないんですけど、お願いです! 頑張りますから、氷室さん、こんな私についてきてくれませんか!?」


 悠里は前のめりになった勢いで、眼鏡がずり落ちているのも構わず魂の声をぶつけた。肩が大きく上下して、荒々しい呼吸だけが沈黙のミーティングルームに響いている。きっと傍から見たら鼻息の荒い危ない女が、今にも美青年を襲おうとしている光景に見えるだろう。


「お前の鼻の穴、大きすぎ……」


「……は、はい?」


「ぷっ、あはは!」

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