俺様編集者に翻弄されています!
「俺が今担当している作家誰だか知ってるか?」
「はぁ? あのねぇ、私はエスパーでも何でもないのよ? 何も聞かされてないのにわかるわけないでしょ」
大きな鼻の穴からフンと息を出して、ナオママは腰に手を宛てがった。
「あはは、そうだよな……まぁ、お前の好きなユーリなんだけ―――」
「えええええっ!? なにそれ? 聞いてない! マジか!?」
ナオママは氷室の言葉を最後まで聞くか聞かないかのうちに大声で遮り、身を乗り出して氷室に詰め寄った。
「そ、それ本当か?」
ナオママは氷室が出版社に勤めていることは知っていた。けれど、日本に戻ってきてからあまり詳しい話しをしていなかったため、無意識に男に戻ってしまった。
「お……おい」
「あらやだ! ついびっくりして地が出ちゃったわ、ンフ」
ホールの客が目を丸くして注目するのを笑ってごまかし、もう一度ナオママはカウンターに身を乗り出した。
「もっと早く教えてよね!」
「な、なんでだよ、別にお前に関係ないだろ……」
「関係大ありよぅ! まずサイン頂戴、あぁ~色紙に額縁も必要ね」
氷室はラズベリージンの入ったカットグラスを傾けながら、話しを勝手に進めるナオママをやれやれと横目に見た。
ナオママはどちらかというと、王道の男女のラブロマンスより、禍々しい劣情が行き交う愛憎劇が好みだった。
そして「愛憎の果て」が出版されてからというもの、すっかり作家ユーリの虜になっていた。
「はぁ? あのねぇ、私はエスパーでも何でもないのよ? 何も聞かされてないのにわかるわけないでしょ」
大きな鼻の穴からフンと息を出して、ナオママは腰に手を宛てがった。
「あはは、そうだよな……まぁ、お前の好きなユーリなんだけ―――」
「えええええっ!? なにそれ? 聞いてない! マジか!?」
ナオママは氷室の言葉を最後まで聞くか聞かないかのうちに大声で遮り、身を乗り出して氷室に詰め寄った。
「そ、それ本当か?」
ナオママは氷室が出版社に勤めていることは知っていた。けれど、日本に戻ってきてからあまり詳しい話しをしていなかったため、無意識に男に戻ってしまった。
「お……おい」
「あらやだ! ついびっくりして地が出ちゃったわ、ンフ」
ホールの客が目を丸くして注目するのを笑ってごまかし、もう一度ナオママはカウンターに身を乗り出した。
「もっと早く教えてよね!」
「な、なんでだよ、別にお前に関係ないだろ……」
「関係大ありよぅ! まずサイン頂戴、あぁ~色紙に額縁も必要ね」
氷室はラズベリージンの入ったカットグラスを傾けながら、話しを勝手に進めるナオママをやれやれと横目に見た。
ナオママはどちらかというと、王道の男女のラブロマンスより、禍々しい劣情が行き交う愛憎劇が好みだった。
そして「愛憎の果て」が出版されてからというもの、すっかり作家ユーリの虜になっていた。