俺様編集者に翻弄されています!
「いらっしゃいませぇ、お客様何かお探しですか?」


(来た……!)


悠里は内心そう思い、迫り来る店員に身構えた。

前回の化粧品の事といい、この手の店員には要注意だと頭の中で警鐘が鳴っている。


「見てるだけですのでお構いな―――」


「今年の新作のお洋服がたくさん入ってきたんですよぉ、これなんかどうですか?」


(き、聞いてない……! なかなか手ごわい相手!)


「お客様は肌の色が白くていらっしゃいますから、こういった薄づきのピンクとかお似合いですよ? スカートとか普段穿かれます? ピンクって春だけって思ってらっしゃる方も多いんですけど、このくらいの目立たないピンクなら夏場も着られるし、おすすめですよー」


 若い女性店員は薄づきのサーモンピンクのスカートを広げてみせた。


(可愛い……!) 


 悠里は一目見てそのスカートが気に入ってしまった。


「こういう色、恋カラーって言うんですよぉ、こちらのベビーピンクのアンサンブルも素敵ですよ」


 恋カラー―――。

 悠里の心をくすぐるには十分すぎる甘い響きだった。


「……恋カラー、全部ください」



 結局勧められるがままに悠里は全部購入してしまった―――。







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