俺様編集者に翻弄されています!
(はぁぁ、目的地に着くまでにこんなに買い物して私何やってんだろ……要領悪すぎ)
悠里はかさばるバッグを抱え直しながら、大海出版のエントランスをくぐった―――。
「あ、ああの……文芸の氷室さんは―――あ、えっと私は高峰っていう者なんですけど」
ユーリというべきか一瞬迷ったが、受付嬢は怪訝な顔つきで悠里を見ながら、編集部に内線で取り繋いでくれた。
「すみません、氷室はまだ戻ってきてないんです。今、こっちへ向かってるってさっき連絡あったみたいなんですけど、道が混んでるみたいで……高峰様というのはユーリ先生でよろしいですか?」
「は、ははははい……!」
悠里はあまり自分がユーリと呼ばれるのに慣れていない。
「ユーリ先生を、「艶人」編集部に通すように言付かりましたので、こちらへどうぞ」
悠里はいつ来ても緊張する出版社に、左右同じ手足を出しながらカクカク歩いてエレベーターに乗った―――。
「あぁ、ユーリ先生、お疲れ様です。すみません、せっかく来ていただいたのに、氷室のやつまだ帰ってないんですよ」
氷室の編集室に顔を出すと、悠里の顔を見るなり若い男性社員が寄ってきて、数枚のA4用紙の入ったファイルを手渡した。
「あ、いいんです……すみません、お忙しいところ」
悠里は深々と頭を下げると、いそいそとその場を離れた。
自意識過剰とはわかっていても、なんとなく事務所の人がこちらを見ているような気がしてならなかった。
悠里はかさばるバッグを抱え直しながら、大海出版のエントランスをくぐった―――。
「あ、ああの……文芸の氷室さんは―――あ、えっと私は高峰っていう者なんですけど」
ユーリというべきか一瞬迷ったが、受付嬢は怪訝な顔つきで悠里を見ながら、編集部に内線で取り繋いでくれた。
「すみません、氷室はまだ戻ってきてないんです。今、こっちへ向かってるってさっき連絡あったみたいなんですけど、道が混んでるみたいで……高峰様というのはユーリ先生でよろしいですか?」
「は、ははははい……!」
悠里はあまり自分がユーリと呼ばれるのに慣れていない。
「ユーリ先生を、「艶人」編集部に通すように言付かりましたので、こちらへどうぞ」
悠里はいつ来ても緊張する出版社に、左右同じ手足を出しながらカクカク歩いてエレベーターに乗った―――。
「あぁ、ユーリ先生、お疲れ様です。すみません、せっかく来ていただいたのに、氷室のやつまだ帰ってないんですよ」
氷室の編集室に顔を出すと、悠里の顔を見るなり若い男性社員が寄ってきて、数枚のA4用紙の入ったファイルを手渡した。
「あ、いいんです……すみません、お忙しいところ」
悠里は深々と頭を下げると、いそいそとその場を離れた。
自意識過剰とはわかっていても、なんとなく事務所の人がこちらを見ているような気がしてならなかった。