俺様編集者に翻弄されています!
「取材は……全部、お断りしてるんで……」


「まぁ! お断りしてるだなんて……あなた随分偉い作家さんなのね、ふふ」


 悠里は蛇の舌で頬を舐められるような気色悪いエミリーの笑いに、唇を結んで、ただ俯いて耐えるしかなかった。


「最近担当さんが変わってね、氷室美岬さんって言ったかしら? ユーリさんと同じ担当さんですってね」


「え……?」



 氷室の名前が出て、悠里は俯いていた顔を上げた。それを見たエミリーは目を細めて小さく笑う。



「素敵な方じゃない? あんな眼福な容姿の担当さんなら、私もいくらか無理をしてもいいって思えるわ、今までの担当さんはなかなか私と折が合わなくて……」


(それはあんたがわがまま放題言ってるからじゃないの?)


 内心そう思いながら、悠里は早く時が経つのを待った。



「あら、あなた室井慶次の小説をお読みになるの?」


 バッグの中から覗いていた室井慶次の小説に目をとめて、エミリーが意外そうな顔をして言った。



「あなた恋愛小説家なのに、好みはサスペンスなのね。そういえば氷室さんって、室井慶次の息子さんなのご存知?」


「えええっ!?」


 悠里はつい我を忘れ、椅子から勢いよく立ち上がると前のめりに手をついた。




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