俺様編集者に翻弄されています！

Chapter2

「あなた、自分の担当者の事、何も知らないのね」


　エミリーは開いた口が塞がらない悠里の顔を見ながら、呆れたようにため息づいた。


　周りの人がちらちらと悠里とエミリーを見ていたが、悠里はそれを気にする余裕もなく口をパクパクさせた。


「そ、それは……知りませんでしたけど、でも私を担当することと、氷室さんが室井慶次の息子であることって何か関係あるでしょうか？」


　ここは負けじと言い返すと、エミリーは悠里の意外な返答に目を丸くした。


「氷室さんは私のために夜遅くまで仕事したり、たまに徹夜したりして支えになってくれてます。仕事は厳しすぎるくらいですけど、何も知らないわけじゃないです」


「ふふ……」


　エミリーはムキになって反論する悠里を滑稽と言わんばかりに鼻で笑った。


「そう、ところで……いいものををお見せするわ」


　エミリーがバッグから取り出したのは「艶人」の人気投票アンケートだった。


「な、なんであなたがこれを……？」


「前の編集さんにちょっとお願いしてね、やっぱり読者の生の声は聞いておきたいじゃない？」


　それは二十代から四十代の読者をターゲットに「艶人」に掲載されている作品の感想などが書かれているまだ非公開のものだった。


「え……」

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