俺様編集者に翻弄されています!
 背の高い氷室にとっては無駄な抵抗だった。

 後ろに隠そうとする前に氷室は、いとも簡単に悠里の手から紙をひったくると、それを見てため息をついた。



「……これを見てショック受けたってわけか」


「う……」


「お前、それでも小説家か」


「え……?」


 氷室を見上げると怒っているような、呆れているような、掴みどころのない表情で自分を見下ろしていた。



「小説の好みなんか人それぞれだろ、万人受けする話なんかない」


「それは……わかってますけど」


「わかってないからへこんでるんだろうが、お前、賛否両論って言葉を知ってるか? 小説みたいな創造物を公表するってことは、必ず批判がつきものだ。否定的なものも全部受け止められる覚悟がないなら今すぐ作家をやめろ」


「っ……」


「そんなやつはプロでもなんでもない」
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