俺様編集者に翻弄されています！

　氷室の険しい視線から本気で怒っているのだと窺い知れると、情けなくて泣けてきた。

　今までせき止めていた涙腺がついに崩壊し、悠里は声を殺しながら泣いた。


「厳しいことを言うようだけど、小説家ってそういう世界だろ？　それに、あの女がお前に見せたアンケートはほんの一部だ」


「……え？」


「あいつ、お前の小説が映画化されるのが気に入らないんだよ、だからお前の批判が書いてあるアンケートだけわざと見せた。あれが全部だと思うなよ」



　そう言いながら氷室は悠里から奪い取ったアンケート用紙を破り捨てた。紙のかけらが散り散りになって、夜の闇に消えていく―――。



「小説を批判するやつは必ずいる。けど、それ以上にお前の連載を楽しみにしている読者もいること忘れんな」


「うっ、うぅ……」


　悠里が眼鏡を押し上げて、嗚咽を漏らしながらゴシゴシと涙を拭っていると、ふと目の前が暗くなって顔を上げた。


「え……？」