俺様編集者に翻弄されています!
「あの、氷室さん今日はごちそうさまでした。お祝いとかでもないのにあんなご馳走していただいて……」


 満腹至極でレストランを出ると、突然、氷室は時間を確認して会社に戻ると言い出した。


「悪いな……」


「え? これからですか? もう日付も変わりそうですけど……」

 ここからタクシーで会社に向かったとしても一時間はかかる。それから仕事をするとなると、かなり遅くなる。


「いい、どうせ確認したい書類があったからな、お前はタクシー呼んでやるからそれで帰れ」


「え? い、いいです! まだ電車で帰れる時間ですから」


 聞く耳持たない氷室の後を追いかけると、既に氷室はエントランスを出てタクシーを呼んでいた。エントランスに待機していたタクシーがすっと目の前で止まって、ドアが開く。


「じゃあな、気をつけて帰れよ」


「……あ、あの、ひとつ聞いていいですか? その、今日は……どうして急に私を食事に?」


 悠里はずっと気になっていたことを口に出してみた。

 誕生日でもないし、なにかの記念日でもないのにわざわざ呼び出してまで食事をした理由とは―――。


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